19人が本棚に入れています
本棚に追加
リアは、竜王の骸の事を調べようと図書室へ向かった。
階段を上っていると下の方から、声が聞こえて来た。
「さっさと出せよ」
「で、でも」
「痛い目みたいのか、え?」
気の弱い生徒がカツアゲ? されている様な声だった。
イチロウは、微かに罪悪感を感じつつ、階段を上がる。
「やめてっ!」
「おらおらっ」
イチロウの足が止まった。
頼むよ。そう言う事は、誰もいないとこでやってくれよ。
助けに行かなきゃいけなくなるだろが!
リアは、わざと大きな音をたてて階段を駆け下りる。
カツアゲ? している奴が、音を聞いて逃げてくれることを望んでいた。
一階分下りて、手すりを使って勢い良く踊り場を回りこむ。と、下の踊り場と、上の踊り場で、両者の目が合った。
小柄な生徒の胸倉を掴んでカツアゲ? 中のそいつの背丈は大人と同じ、横幅と肉付きは父の二倍はあった。リアは、特に相手の胸板の厚さと、腕の太さに釘付けになる。筋肉の仕上がりは完璧に見えた。
やばいのいるよ。生徒のサイズ感じゃねえし!!
「なんだ、お前。見てんじゃねえぞ」
相手の見た目は人型に見えたが、目だけは白目の無い黒一色だった。
リアは、青ざめる。やっと、か細い声で返す。
「い、や、下に、行きたいだけで……」
「さっさと行けよ」
小柄な生徒の、助けを求めるような目がリアを見た。
リアは、下を向く。駆け下りて来た時の勢いを失くし、固い顔で階段を下りる。
踊り場に下りる。二人の目の前に来た。
「た、たすけ……」
消え入りそうな声が、確かにリアの耳に届いた。
――無理だ。
リアは、歯を噛み締め、そのまま下へ下りていった。
最初のコメントを投稿しよう!