5.魔王の座

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 リアは、竜王の(むくろ)の事を調べようと図書室へ向かった。  階段を上っていると下の方から、声が聞こえて来た。 「さっさと出せよ」 「で、でも」 「痛い目みたいのか、え?」  気の弱い生徒がカツアゲ? されている様な声だった。  イチロウは、微かに罪悪感を感じつつ、階段を上がる。 「やめてっ!」 「おらおらっ」  イチロウの足が止まった。  頼むよ。そう言う事は、誰もいないとこでやってくれよ。  助けに行かなきゃいけなくなるだろが!  リアは、わざと大きな音をたてて階段を駆け下りる。  カツアゲ? している奴が、音を聞いて逃げてくれることを望んでいた。  一階分下りて、手すりを使って勢い良く踊り場を回りこむ。と、下の踊り場と、上の踊り場で、両者の目が合った。  小柄な生徒の胸倉を掴んでカツアゲ? 中のそいつの背丈は大人と同じ、横幅と肉付きは父の二倍はあった。リアは、特に相手の胸板の厚さと、腕の太さに釘付けになる。筋肉の仕上がりは完璧に見えた。    やばいのいるよ。生徒のサイズ感じゃねえし!! 「なんだ、お前。見てんじゃねえぞ」 相手の見た目は人型に見えたが、目だけは白目の無い黒一色だった。  リアは、青ざめる。やっと、か細い声で返す。 「い、や、下に、行きたいだけで……」 「さっさと行けよ」  小柄な生徒の、助けを求めるような目がリアを見た。    リアは、下を向く。駆け下りて来た時の勢いを失くし、固い顔で階段を下りる。    踊り場に下りる。二人の目の前に来た。 「た、たすけ……」 消え入りそうな声が、確かにリアの耳に届いた。 ――無理だ。  リアは、歯を噛み締め、そのまま下へ下りていった。
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