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「ごめんね。腕力じゃ勝てないからさ。助けるのちょっと遅くなったけど」
リアが、言った。
小柄生徒は、名前をギイロと言った。
放課後、二人は、誰もいない屋上で話をしていた。
筋肉男は、親の上司の子供だと言う。
「逆らえなくて」
ギイロが、言った。
リアは、黙っていた。
――そう言う時って、どうするのが一番いいんだろう。ここは、警察とかいないだろうし――
リアの頭の中に、父の姿が浮かび上がる。
――魔王か――
「ところで、何をたかられてたの?」
「あ、それはこれです」
ギイロは、首から下げていた黒い革紐を引っ張り上げ、その先に下がっている濃い紫色の石を見せた。硝子の様な透明感があり、石の中心部には金色の粉の様なものが見え、夜空の星の様にきらきらと光っていた。
リアは、顔をほころばす。
「キレイだなぁ!」
「あいつ、こういうの目が無くて」
ギイロが、困った様に言った。
「これは、父さんから貰ったものだから、どうしても渡せなかったんです」
「そんな大事なもん、渡さなくていいよ」
「俺、魔力が小さくて……」
「俺もだ」
――小さいどころか、目覚めてない。
ギイロは、リアを見た。微かに微笑んでいたものの、目は真剣だった。
「リア様は、魔王になるべきと思います。俺の希望です」
リアは、とっさに何も言えなかった。
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