5.魔王の座

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「ごめんね。腕力じゃ勝てないからさ。助けるのちょっと遅くなったけど」 リアが、言った。  小柄生徒は、名前をギイロと言った。  放課後、二人は、誰もいない屋上で話をしていた。  筋肉男は、親の上司の子供だと言う。 「逆らえなくて」 ギイロが、言った。  リアは、黙っていた。 ――そう言う時って、どうするのが一番いいんだろう。ここは、警察とかいないだろうし――  リアの頭の中に、父の姿が浮かび上がる。 ――魔王か―― 「ところで、何をたかられてたの?」 「あ、それはこれです」 ギイロは、首から下げていた黒い革紐を引っ張り上げ、その先に下がっている濃い紫色の石を見せた。硝子の様な透明感があり、石の中心部には金色の粉の様なものが見え、夜空の星の様にきらきらと光っていた。  リアは、顔をほころばす。 「キレイだなぁ!」 「あいつ、こういうの目が無くて」 ギイロが、困った様に言った。 「これは、父さんから貰ったものだから、どうしても渡せなかったんです」 「そんな大事なもん、渡さなくていいよ」 「俺、魔力が小さくて……」 「俺もだ」 ――小さいどころか、目覚めてない。  ギイロは、リアを見た。微かに微笑んでいたものの、目は真剣だった。 「リア様は、魔王になるべきと思います。俺の希望です」  リアは、とっさに何も言えなかった。
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