1.目覚め

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1.目覚め

 イチロウは目を覚ました。  辺りは薄暗い。 ――ここはどこだ?――  ベッドの上で寝ている感触があった。 ――あれ、俺、リビングで倒れたんじゃなかったか?――  ベッドから上半身を起こそうとして気が付く。  上手く起き上がれない。見ると、腕が短い。手が小さい。んん? 脚も……短っ! ちょっとまて! 俺、こんなに脚、短くないぞ!  変だ。  イチロウは、思った。  全体的に体が小さくなってる……?  イチロウには、何が起きたのか、さっぱり分からない。だが、何故か嫌な予感がして背筋が寒くなった。  その時、寝室のドアが、静かに開いた。 「リア? まだ起きてるのかい?」 優しい声が聞こえ、イチロウは、無意識にほっとして声の方を見た。薄暗い部屋の中に背の高い男のシルエットが浮かび上がっていた。  男は、窓際のイチロウのベッドに歩み寄り、腰を下ろした。  雲に隠れていた月が顔を出し、月光が窓から差し込んだ。光は男の顔をはっきりと浮かび上がらせた。  黒い長い髪。彫りの深い顔に透き通る金色の瞳が静かに輝いていた。   「悪い夢でも見たのか?」 男は、イチロウを安心させるように優しく言った。  あれ? このひと……このひ……と、じゃない!―― 「とうさん!」  イチロウは、思い出した。  転生して、魔王の息子になっていた事を。  息子、リア=キュゼリオンは、まだ六歳。魔王ガウデシオンは、リアを溺愛していた。  魔王が、勢い良くリアに抱き着く。 「私のかわゆいリアぁ! お父さんはお前の事を誰よりも愛してるぞっ!」 「何言ってんだよ! てめえ!」 「リア、照れっちゃってえ、かわいいなぁ。大ちゅきだぞ!! んちゅっ」  ぃやめろぉーーーーーー!!!!!!!!  リアことイチロウは、心の中で絶叫した。
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