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7.スカウト
翌日。
リアは、取り立てに来た四魔王子に校舎裏に連れて行かれた。
「それで、鱗はどうした」
グリヴァスが、リアを壁際に追い詰めて見下ろすように訊いた。
「そ、それなん……ですが」
リアは、圧に震えながら上ずった声で事情を話した。発見した場所に関しての詳細な説明は避けた。マキラが騙していた事も、火に油を注ぎそうなので当然伏せる。とにかく、思った様な鱗ではない事を強調し、諦めてもらうしかないと思った。
「ばあっはっはっ!」
四魔王子の一人、黒豹族の母を持つヴォーグルが大笑いした。人型ではあるが、頭部には獣の耳、臀部には細くしなやかな尻尾を生やしている。黒い短髪、肌は黒に近い褐色で、魔王よりも濃い金色の目を持つ異母兄は、四魔王子の中で最も年長で、底知れない魔力を秘めていた。
「魔魚だってさ。笑える」
「笑えるけどさ……」
四魔王子最後の一人、鳴嵐族の母を持つガルヴァルトは、苛立ちを滲ませていた。鼻筋の美しい、青い瞳、ゆるふわ青髪の四魔王子一のイケメンだ。
「もういい、気は済んだろ」
冷淡に、ヴァイバーが言った。
リアは、内心このまま無事に解放されることを期待した。
四魔王子の内、二人はもう興味無さそうだ。
頼む、このまま……
「取って来いって言ったよな」
グリヴァスが、低い声で言った。その目は、思い通りにいかないものを排除しようとするような一方的な殺意を宿していた。
「なっ」
リアは、顔を歪めた。
――そんなん言ったって、ないもんはしょーがないだろ!!
リアは、思わず後ずさるが、既にそこは壁だった。
グリヴァスの手から、ボッっと炎が燃え上がる。
リアは、びくりと目を見開く。
グリヴァスが、リアに近づく。
「おい、グリヴァス」
ヴォーグルが、後ろから声を掛けた。
「言ったろ。炎なんか使ったら、自分がやったと宣伝するようなモンだって」
グリヴァスは、リアの方を向いたまま、動きを止めた。
「……そうだったな」
グリヴァスの手から出た炎が、すうっと消える。
リアは、これ以上逃げられない事が分かっていて、壁にすがった。
グリヴァスは、舌なめずりして口をにたりと歪めた。
「なぶり殺してやる」
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