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四魔王子の姿が見えなくなって、リアはやっと立ち上がった。
グラネッタが、リアに歩み寄る。
「いいのぉ? あんなのに忠誠誓っちゃって」
リアは苦笑してグラネッタを見る。
「やった後で言われてもね」
「まあそうね」
「グラネッタ、強いんだね。スカウトして正解だった」
リアは、感心して微笑んだ。
昨日、竜王の鱗の回収に失敗したリアは、一計を案じた。
明日になれば、鱗はどうしたとせっつかれるだろう。
鱗を用意できない自分は、逆切れされて殺されるかもしれない。
いや、それは困る。
あんな痛い目もうあいたくないし、死にたくない。
どうする?
リアは、グラネッタのクラスを訪ねた。グラネッタは、教室にはいなかったが、図書館にいると教えてもらった。
図書館には、他に生徒がいたがまばらだった。
リアは、歴史分類の本棚の前でグラネッタを見つけた。
リアは、さりげなくグラネッタの横に並ぶ。
「どうしたの?」
グラネッタが、抑えた声で訊いた。
リアは、本棚の方を向いたまま、抑えた声で言う。
「俺、命が危ないんです」
「でしょうね」
グラネッタが、こともなげに応えた。
リアは、思わずグラネッタを見る。
「助けてくれませんか」
「なんで私?」
「嫌いでしょ、弟の事」
グラネッタは、ちらりとリアを見た。
「うん、嫌い。ほんと嫌い」
「因みに、何で」
「私より魔力があるくせに私より馬鹿だから」
イチロウにも兄妹がいたので、なんとなく、気持ちが分かるような気がした。
「私は魔王にはなれない。だから余計腹立つの」
本棚の本に呟く様に、グラネッタは言った。多くの高位魔族の女は、魔王に嫁として差し出す為の政治的道具と位置付けられていた。
「では、第一の側近になるのはどうですか?」
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