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「問題ないんじゃないですか?」
学園長室で執務机に着いている学園長が、のんびりと言った。
リアとグリヴァスたちのいざこざは、誰が言い触らしたのか、リアがグリヴァスにケンカを吹っ掛けた、と歪曲されてグリヴァスの担任教師に伝わった。この担任は親グリヴァス派であった。事実かどうかよりグリヴァスに媚びを売る為に、さも大問題であるが如く学園長に報告を上げた。
リアは、学園長室に呼び出され、グリヴァスの担任が、リアを引っ立てて来た。もう一方の当事者であるグリヴァスは、面倒臭がって来なかった。担任が上手いことやると高をくくっていた。
リアは、学園長の机の前に立っていた。グリヴァスの担任が話すのを黙って横で聞いている。リアは、初めて見る学園長をまじまじと見る。
一見よぼよぼの老人に見える(成人以上の魔族は見た目通りの年齢ではない事が普通だが)。
学園長の白髪は、魔石研究室のマキラと違い、だいぶ薄く、艶の無いやせ衰えた感じの白髪だった。高齢の為に白髪化したのかも知れない。顔は皮膚が薄く、瞼が垂れている為、目が糸の様に細かった。いや、もはや無いと言えた。
目を細め穏やかな佇まいの学園長をみて、リアは、思う。
――見えてんのかな。この人。
学園長が、のんびりと言う。
「ここは魔界第一学園です。ケンカがあるのが当たり前です。なんなら殺し合ったって構わないんですよ」
――は?
リアは凍り付いた。
――今、こいつ、さらっとヤバい事言わなかったか?
「しかし、学園長!」
グリヴァスに気に入られたい担任は、食い下がる。
「ケンカだけじゃない。こいつは、研究員を脅して無理やり研究棟に入ったって話ですよ! 騒ぎは起こすわ、勝手なことするわ! こんなの許していいんですか?! 即刻、退学させるべきです!」
リアは、一方的な話をまくしたてる担任に心底呆れる。
――研究員を脅して入ろうとしたのはグリヴァスなのに。てか、なんで俺が研究棟に入ったの知られてんだ?
「研究棟に無理やり入ったのなら、その時点で私に報告が上がる筈ですが、私は何も聞いていませんねえ」
学園長が、のんびりと言った。
担任は、一瞬固まる。
「え、い、いや、しかし、私はそう聞きましたが……」
「誰から聞いたんですか?」
「生徒から……」
担任にとって事実はどうでもよく、リアを退学にしてグリヴァスに気に入られればそれで良かった。
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