7.スカウト

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 学園長は、ゆったりと微笑んだ。微かに開いた目の中に白濁とした瞳が見えた。  ぞくうッ!!  担任と、リアの背筋に今まで感じた事のない強い悪寒が走った。 ――え?! な、なんだ?!  リアには、悪寒の理由が分からなかったが、担任には心当たりがある様だった。  何事も無い様に、学園長は、のんびりと言う。 「上げるべき報告を怠っている者がいるという事ですね?」  担任は、はっとなった。その報告を本来担っているのは警備担当である。警備担当は、グリヴァスと同じ、火焔族の者だった。  グリヴァスに気に入られたい担任は、火焔族の警備担当が報告を怠っているとは口が裂けても言えない。 「い、いや、それは、その……」 「それとも私は、騙されているのですか? 騙しているのは、君ですか?」  学園長の目が、にっこりと細められた。  担任の顔は、みるみる青くなる。 「い、いえ、その、恐らく、その、生徒が、その、勘違いしていたのだと、思います……」 「では、先程仰った事実は無い、という事ですね」 「は、お、恐らくは……」 「本当ですか? 報告を怠った者を調査しなくて大丈夫ですか?」 学園長の念押しは、担任には脅しに聞こえた。 「は、はい」 「先生」 「は、はい」  学園長は、にっこりと微笑む。 「私、こう見えて、無駄が嫌いなんです。貴方は生徒の嘘に騙されて、私に無駄な時間を使わせましたね」  担任は、血の気が引く。 「も、も、申し訳ありません」 「目先に捕らわれて、本分を忘れてはいけません。貴方には生徒たちをまっとうな魔族になるよう導く使命があります。生徒の見本となるような、正確で迅速な報連相を心掛けて下さい」 「は、はいっ」 「今度、無駄な事をすれば、即刻排除しますから、そのつもりでいて下さい」 「は、はいっ」  学園長は、細い目でリアを見た。 「リア君」  リアは、ぎくりとなる。 「は、はい……」 「ケンカは大いに結構、どんどんやってください。殺しても殺されても私は構いませんから」 「は、はい」 ――こええ。 「両者とも、下がって良いですよ」 学園長は、にっこりと言った。
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