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「ゴキョーーー!!」
甲高い奇妙な雄叫びが魔界に響き渡った。
魔界の朝は、魔鳥の雄叫びで始まる。
魔鳥ゴキョは、時間を報せる為だけに生きている鳥だ。
魔界は、夜は月が出るが、太陽と言うものが無い。この為、年中薄暗い。
とはいえ、日中、と言える時間は人間界での曇天の日ような状態で、かなり視界が利き、明るいと言えた。
イチロウは、結局、昨夜は一睡も出来なかった。魔王がやたらとベタベタして来た為だ。
なんなんだ、ありゃ。俺は、とんでもない所に転生してしまった。どうしてこんな事に?!
イチロウは、つい昨日まではイチロウの頃の記憶を忘れていた。
それが急に思い出した。
それまで、何の疑問も持たず、魔王の息子だったのに……。
魔王は、人間界を支配している。
人間を奴隷にして働かせたり、やりたい放題だ。
あああ~! 何も知らない息子でいたかった!
イチロウは、心底そう思った。
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