9.魔の森サバイバル

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「魔の森?」 リアが、ギイロに聞き返した。  低学年の授業でも魔の森に入るサバイバル授業が始まろうとしていた。  内容は高学年と少し違う。 「森の中から獲物をひとつ獲って戻って来ること!」 濃紺色の長髪を後ろに流した先生が言った。 「獲物~?!」 え~?! と、校庭のあちこちで声が上がる。 「獲物って、魔植物の葉っぱといかでもいいんですか?」 「魔果実とか?」 「魔虫でもいいんですか?」 「あんたら、志が低すぎるわよ」 先生が、呆れて言った。 「魔獣! 一択! それ以外は点数あげないよ!」 「え~?! 魔獣が可哀そうです~」 「学園の都合で、無益な殺生をするんですか?」 「絶滅危惧種もいますよ。絶滅させていいんですかぁ?!」  先生は、目付きが悪くなる。 「クソがきゃあ、めんどくせえ……」  彼らは魔界の中でも、比較的安全な場所、魔王の城下で生まれ育った。その為、危機感が薄かった。人間に対する危機感ではない。魔族に対する危機感だ。  魔族は利害が一致すれば協調もする。だが魔族の本質は裏切りだ。  先生は、危機感のない子供たちに、協調と裏切りの両方を教えなければならなかった。  果たして、教え方に正解などない。 「さっさと行け! 殺すぞ!」 先生の長い髪がざわりと逆立ち、身体がメキメキと大きくなった。 「きゃー!」 「逃げろお!」 生徒たちは、面白おかしく悲鳴を上げながら、森へと走って行く。 「行くか」 リアが、言った。 「はい」 ギイロが、応えた。 「何でさ、敬語なの?」 「え、駄目ですか?」 「いや……」 明らかに、俺のが年下じゃん。と、リアは思った。 「リア様を尊敬してるので」 ギイロは嬉しそうに言った。 「そ、そう……」 リアは、戸惑いながら思う。 ――前世で尊敬された事、あったかな……
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