9.魔の森サバイバル

3/7
前へ
/59ページ
次へ
 今、魔の森の中には低学年と高学年の生徒の両方がいる。  それぞれ、課題をクリアする為に、森に入った。  魔の森の人口密度は急激に高まる。あちこちで肩がぶつかっただのの言い合い、獲物の奪い合い、相手の課題達成の阻止、大小様々な争いが多発した。  生徒同士での争いに夢中になっていると、するりと大蛇の様に太いつるがのびて来る。身体に巻き付き、肉食の魔植物の巨大な口の中に放り込まれる。 「ぎええええええ!」 「ぎゃああああ!」  悲鳴が、あちこちから聞こえていた。  獲物の数は限りがあるので、皆、先を争って前へと進むが、リアとギイロはゆっくり後ろを歩いていた。そもそも森の中は薄暗くて、半分人間のリアには視界が充分に利かなかった。 「見えますか?」 ギイロが、心配げに言った。 「う、うん。なんとか」 暗さになれると、少しは見えて来た。  森の中は獣道もあるが、丈の長い草が良く茂り、それほどサクサクも進めなかった。  周りにも、ゆっくり行く生徒がちらほらいた。 「あいつらも、あんまり見えないのかな」 「いえ、多分……」 「ぎゃーーー!」 「ぐえあっ!」 悲鳴が聞こえて、何人かが、だっと走り出した。  四足の鋭い爪と牙を持つ、黒い魔獣がいた。  低い体勢で新たにやって来た獲物を睨みつけている。 「ちっ、大して弱ってねえな」 「退こう」 魔力の弱い生徒たちは、直接対決を避け、霧を出現させて姿を消す。  魔獣は、新たな獲物を見失ったが、仕留めた生徒にかぶり付いた。 「他の生徒とやり合って弱った魔獣を仕留めるつもりなんです」 ギイロが、補足説明した。 「それいいかもな」 リアが、言った。 「はあ」 ギイロは、少し失望する。リアには、もっと堂々としていて欲しかった。  リアたちのいる場所より少し先の森の中――。 「ぎゃあああ!」 魔獣に食われている生徒を木の上からぼーっと眺めているグリヴァスがいた。生徒狩りも少し飽きていた。 「おい、グリヴァス」 ヴォーグルが、木の上を飛んでやって来て、グリヴァスの正面にある枝に乗った。  グリヴァスが、不思議そうな顔をする。 「どうしたよ」  ヴォーグルが、にやりとした。 「あのガキがいるぞ」 「なに」 グリヴァスの目に、嬉々として殺気が蘇った。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加