19人が本棚に入れています
本棚に追加
今、魔の森の中には低学年と高学年の生徒の両方がいる。
それぞれ、課題をクリアする為に、森に入った。
魔の森の人口密度は急激に高まる。あちこちで肩がぶつかっただのの言い合い、獲物の奪い合い、相手の課題達成の阻止、大小様々な争いが多発した。
生徒同士での争いに夢中になっていると、するりと大蛇の様に太いつるがのびて来る。身体に巻き付き、肉食の魔植物の巨大な口の中に放り込まれる。
「ぎええええええ!」
「ぎゃああああ!」
悲鳴が、あちこちから聞こえていた。
獲物の数は限りがあるので、皆、先を争って前へと進むが、リアとギイロはゆっくり後ろを歩いていた。そもそも森の中は薄暗くて、半分人間のリアには視界が充分に利かなかった。
「見えますか?」
ギイロが、心配げに言った。
「う、うん。なんとか」
暗さになれると、少しは見えて来た。
森の中は獣道もあるが、丈の長い草が良く茂り、それほどサクサクも進めなかった。
周りにも、ゆっくり行く生徒がちらほらいた。
「あいつらも、あんまり見えないのかな」
「いえ、多分……」
「ぎゃーーー!」
「ぐえあっ!」
悲鳴が聞こえて、何人かが、だっと走り出した。
四足の鋭い爪と牙を持つ、黒い魔獣がいた。
低い体勢で新たにやって来た獲物を睨みつけている。
「ちっ、大して弱ってねえな」
「退こう」
魔力の弱い生徒たちは、直接対決を避け、霧を出現させて姿を消す。
魔獣は、新たな獲物を見失ったが、仕留めた生徒にかぶり付いた。
「他の生徒とやり合って弱った魔獣を仕留めるつもりなんです」
ギイロが、補足説明した。
「それいいかもな」
リアが、言った。
「はあ」
ギイロは、少し失望する。リアには、もっと堂々としていて欲しかった。
リアたちのいる場所より少し先の森の中――。
「ぎゃあああ!」
魔獣に食われている生徒を木の上からぼーっと眺めているグリヴァスがいた。生徒狩りも少し飽きていた。
「おい、グリヴァス」
ヴォーグルが、木の上を飛んでやって来て、グリヴァスの正面にある枝に乗った。
グリヴァスが、不思議そうな顔をする。
「どうしたよ」
ヴォーグルが、にやりとした。
「あのガキがいるぞ」
「なに」
グリヴァスの目に、嬉々として殺気が蘇った。
最初のコメントを投稿しよう!