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「別行動しましょう」
ギイロが、リアに言った。
リアは、きょとんとする。
「何? どうしたの?」
どうしたの? じゃない、とギイロは思った。
リアと小一時間一緒にいて、ギイロは、リアの情けない所ばかり目にした。
今も、リアたちは、他の生徒とやり合って弱った魔獣を仕留めるつもりの連中より、更に後ろにいた。彼らの残り物にありつこう、という魂胆だ。
志が低すぎる。
自分は、ひどい思い違いをしているのではないか。
リアは、全く魔王に相応しくない。
自分の事を助けてくれたのも、ただのたまたまの、気まぐれではないか。
そう、ギイロは思った。
「じゃ」
そう言って、ギイロは、そっぽを向き歩き出す。
「ギ、ギイロ!?」
リアは、背中に呼び掛ける。だが、ギイロは、振り返りもせず何処かへ行ってしまった。
リアは、ひとり、残された。
魔の森に、ぽつん、と、独り。
ギャッギャッギャッ!
びくうっ! とリアの肩が跳ねた。
「何……?」
リアの腰が引けていた。今までギイロが一緒だったから、怖さを意識しないで済んでいた。
「やばい」
恐怖と危機感で、全身から汗が噴き出す。
心臓が踊る。
足が震える。
動けず、立ち尽くす。
その時。
「グエエエエエ」
地の底から響く様な呻き声が聞こえた。
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