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「魔蛙は魔獣じゃないわよ」
リアの思惑を見透かしたような冷静な声がして、リアは振り向いた。グラネッタがいた。動きやすいパンツスタイルで長い髪を頭の後ろでおだんごにしてまとめていた。
――グラネッタ、かっこいい
リアは、自分を振り返って、情けなく頭を掻く。
「生死を問われてなかったからさ、ゲゲを連れって済むんなら、それがいいなあって」
グラネッタは、肩を竦める。
「そりゃ危険を冒して魔獣を仕留めなくても済むけど、魔蛙は魔蛙だから」
「そっかあ、ははは」
「サバイバル授業の話かヨサ?」
ゲゲが口を挟んだ。
リアが頷く。
「そうそう」
ゲゲは、げーっと溜息をつく。
「魔の森が騒がしくなって嫌なのヨサ。けど、前の前の前の魔王様に良くしてもらったから、我慢してるのヨサ」
「はあ」
「魔界が強くなるために必要な授業なのヨサ」
「なるほど」
「ところでリア」
グラネッタが、腰を折り、リアの耳元に口を寄せる。
リアは、どきんと胸が鳴った。顔を寄せるグラネッタからは、ほのかに甘い香りがした。
「グリヴァスたちが、貴方の命を狙ってるわ」
「え」
甘い香りとは裏腹な手厳しい内容に、リアの顔は青ざめる。
「あいつらはきまぐれ。へーこらした所で、隙あらば命を狙って来る。ここは魔の森。何が起きても魔獣の仕業に見せかけられる」
グラネッタは、そこまで言って、顔を離した。
リアは、グラネッタの顔を見た。
グラネッタは、いつもと変わらない様子だった。
「どうしてそんなに平然としてるの?」
リアが、訊いた。
グラネッタが、不思議そうに首を傾げ、微笑む。
「予測の範囲内だから。いつものことじゃない」
リアは、思わず苦笑した。
「たしかに。手はあるの?」
「そこの魔蛙さんに、仕留められそうな魔獣の居所を教えてもらって、さっさと課題をクリアして森から出る。私も、課題をクリアしないといけないから、ずっと一緒にはいられないけど、途中までなら付き合えるわ」
「まじ、助かる」
「魔蛙さん、お願いできます?」
グラネッタは、目線が少しだけ上のゲゲを見上げて、にっこりと微笑んだ。
ゲゲの赤い目が大きくなり、赤黒い肌が明るさを増した。
「ゲ、ゲゲに任せるのヨサ!」
ゲゲは、興奮して鼻を鳴らした。
「ありがとう」
グラネッタは、微笑んだ。
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