9.魔の森サバイバル

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 ゲゲの案内で森の中にある池に辿り着いた。そこは穴場らしく、ゲゲくらいしか知られていないようで、リアたち以外は誰もいなかった。  辺りは水が腐った様な生臭い臭いが立ち込めている。 「水魔獣の巣なのヨサ。攻撃力はさほどないのよヨサ」 どろりとした真っ黒な水面から、もさもさ毛が生えた丸い頭らしきものがぬっと出てきた。黒い水を被った顔の中央にある二つの赤い目がギラリと光った。 「~~~~~~ッ!!」 リアは、声にならない声で叫び、気を失った。 「ちょっと!」 慌ててグラネッタが、倒れるリアの身体を受け止めた。 「嘘でしょ?!」 「また気を失ったヨサ」 ゲゲが、呆れて言った。その脇をリアと変わらない大きさのイタチの様な姿をした水魔獣が悠然と歩いて行く。歩く度、身体から黒い水がぼたぼたと落ち、ごわごわとした茶色い毛が露わになる。一見して攻撃力はなさそうに見えた。 「仕留めて!」 グラネッタが、咄嗟にゲゲに叫んだ。  ゲゲは、顔を歪める。 「最初の話と違うのヨサ」 「いいから! 殺されたいの?!」 「仕方ないのヨサ」 ゲゲは、その巨体からは想像もつかない速さで振り返ると、一瞬にして水魔獣を口の中に放り込んだ。グラネッタが、えっと思っている間に、水魔獣の姿は、ゲゲの中に消えた。  グラネッタは、目を剝く。 「何? 何したの?」  ゲゲは、残念そうに大きな口をへの字にする。 「おねえちゃん、魔蛙の存在は知ってても、実力は知らないのヨサ」 「悪かったわね」 「魔蛙は”狩人(ハンター)”なのヨサ。狙った獲物は逃さないのヨサ」 「食べたの?」 「腹の中に入れただけなのヨサ。水魔獣は毛の中に毒針を仕込んでるのヨサ。ゲゲの消化液で溶かすのヨサ」  グラネッタが、眉を寄せた。 「それ、攻撃力ありありじゃない」  ゲゲは、飄々として答える。 「密着して刺されなきゃいいのヨサ」 「それは、そうかも知れないけど……」 「小僧が仕留めた様に偽装する気なのヨサ」 「そうよ。悪い?」  ゲゲは、にやりと口角をあげた。 「だから針を溶かしてるのヨサ」  グラネッタは、微笑んだ。 「ありがと。さすが森の主ね」 「そ、それほどでもないのヨサ」 言いつつ、ゲゲの肌が赤くなった。 「それに引きかえ……」  グラネッタは、呆れて腕に抱えているリアの顔を見た。ばっくりと口を開けて白目を剝いていた。まるで魂が抜けてる様だ。  ゲゲが、リアを見下ろし顔を歪める。 「情けないのヨサ。おねえちゃん、つるむ相手間違えてないかなのヨサ」  ゲゲの言葉に、グラネッタは、どきりとした。そうかも知れない、と思っていた。
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