3.魔界学園

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「そのへんにしとけよ」 四魔王子の一人、銀龍族の母を持つ、黒髪、銀の瞳の魔王七番目の息子、ヴァイバーが言った。涼し気にグリヴァスを見る。 「マジで殺したら、こっちが殺される」 グリヴァスは、不満気ながらも動きを止め、リアの顔から足をどけた。  リアは、やっと息が出来る様になった。荒い呼吸をし、鼻から喉に入った血でむせる。 「ゲホッ」 咳き込んで、身体を下に向けて血と砂利を吐き出した。息が苦しかった。  呼吸を整えているそばから、グリヴァスに髪の毛を掴まれ、引き揚げられた。 「あぅっ!」  グリヴァスは、陰湿な目でリアを見て、薄笑みを浮かべた。 「おい、リア、お前に使命を与えてやるよ」 「グリヴァス」 ヴァイバーが、止める様に声を掛けるが、 「殺しゃしないんだ、良いだろ」 グリヴァスが、面白そうに答えた。リアの耳元でささやく。 「この学園の地下に、竜王の(むくろ)があるんだとよ」  リアは、朦朧(もうろう)とした意識の中で、聞いた言葉を思い返す。 ――リュウ、オウ、ノ、ムクロ……?――― 「竜王族は神の眷属(けんぞく)だったが、大昔に地に()ちてこっち側になった。覇権(はけん)を争い魔王と戦ったが勝てず、滅んだ」 ――ホロンダ……?――  今まで涼し気な顔をしていたヴァイバーが、かすかにいら立ちを顔にあらわした。竜王族と銀龍族は、縁の近い種族だった。ヴァイバーにとって気持ちの良い話ではない様だった。 「噂によると、竜王の(うろこ)は、鍛える事によって最強の武器になるらしい」 「馬鹿馬鹿しい。鱗なんか、誰がどうやって鍛えるんだ」 ヴァイバーが、呆れて言った。 「竜王の鱗はその時点で(はがね)の様に堅いと聞く。場合によっては、人間の技術で作れるんじゃないか? が」  ヴァイバーと、残りの四魔王子の二人が色めき立った。 「まさか……」 「でも、出来るとしたら……」 三人が、顔を見合わせた。  その様子を満足気に見ていたグリヴァスが、リアにささやく。 「お前が取って来るんだよ。そしたら、卒業するまで、もう何もしないでやるからよ」 「ホ、ホント、ニ……?」 リアが、うわごとのように呟いた。  グリヴァスが、にやりとする。 「ホントさ。俺たち兄弟なんだからよ。仲良くやろうぜ。だがその為には、お前は俺に忠誠を誓わないといけない。分かるよな」  低い陰湿な声が、リアの脳を侵食するかのように響いた。  リアは、 「ワカ……ッタ」 と、呟いた。  グリヴァスは、用は済んだとばかりにリアの頭を投げ出した。リアは、うっと呻いて倒れ込んだ。  グリヴァスは、立ち上がると冷たくリアを見下ろす。 「しっかり働けよ、リア」  リアは、倒れたまま動かなかった。
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