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prologue
深い深い森の奥。
この世界に迷い込んだ幼いわたしを、”あの人”は拾ってくれた。小さな木造の家で、わたしはあの人と二人暮らし。ここはドゥードゥファンと呼ばれる山のように巨大な魔物の背中の上らしい。
「この魔物は......契約した者の一番大切な感情の一部を捧げ続ける限り、この背に住まわせてくれる」
これは大切な決まりごと。
どうやら契約は家単位らしく、わたしはあの人の捧げた感情のお陰で、ドゥードゥファンの背中に住み続けることが出来た。
寡黙なあの人は、決して多くを語ることはない。突き放さない程度の距離感でずっとわたしを側に置いてくれた。
銀の髪に翡翠の瞳をした美しい人。彼はこの世界でわたしが生きていくためのアレコレを彼は手取り足取り教えてくれる。わたしは彼をお師匠様と呼び、薬草学や魔法を中心にどんどん吸収していった。
いつしか、恋心を抱いた。
しかし、お師匠様にはずっと想い続けている女性が居た。彼女はもう亡くなってしまっているらしいけれど、亡くなってしまっているが故に永遠にお師匠様の心に居座り続けた。わたしの恋が叶うことは、ない。
お師匠様はある日、わたしドゥードゥファンの祠で契約させると、姿を消した。
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