VI

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(今月は早く薬が出来た)  水晶月のある日、村に下りると、お祭りのように騒がしかった。魔法の花吹雪が舞い、村人達が踊っている。  薬屋の養女が焦ったようにわたしを止めた。 「魔女さま、今は来てはなりません!」  わたしはなんだか胸騒ぎがして、村人達のざわめきの中に隠れた。 「ついに長年、恋人すら作らなかった王が結婚するんだって」 「既に別荘も建ててウハウハらしいな!」 (え......)  ばら撒かれた瓦版に写っていたのは、若い女性と仲睦まじそうに腕を組むリドの姿。  心が悲鳴を上げるように引き裂かれた。私は、もうすっかりリドのことが好きになっていたのだ。 (! しまった)  ドゥードゥファンとの契約印が酷く傷んだ。
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