act.6

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柾冬のマンションの前で車が停まると綾が言う。 「大惺、柾冬さんが今度うちでみんなで飲もうって。稲見さんたちにも声かけたら深雪さんがタコ焼き焼くからワイン飲もうって言ってた。唯夏と一緒に遊びに来て」 「マジか。深雪さんのタコ焼きなんて絶対美味いじゃん。唯夏がめちゃくちゃ喜ぶだろうな」 綾が嬉しそうに笑うのを見て大惺は目を細めた。 「おまえが幸せそうでほんとに良かった」 しみじみそう呟くと大惺は長い指で綾の頬をそっと撫でた。 「大惺……」 「門倉さんにタコパ、楽しみにしてますって伝えてくれ」 「うん」 綾は車を降りると運転席の窓越しに大惺に声をかけた。 「大惺、いつもありがとう」 「なんだよ改まって」 「うん。なんか、ちゃんと言いたくなって」 綾の真っ直ぐな瞳を見て大惺は笑顔で頷いてみせた。 「門倉さんによろしく」 最後に綾の頭をポンと撫でてから大惺は車を発進させた。 綾は車が完全に見えなくなるまで見送ってからエントランスに入っていく。 「今度か……」 大惺はハンドルを握りながら先ほどの綾の言葉を思い出していた。 いまや柾冬がいる場所が綾の帰る場所なのだ。 綾の口から自然に出た「うち」という言葉に大惺は感慨深い思いでいた。 ーーあの、人見知りの綾が。 「やっぱりあの人はスゲーな」 自らの殻に閉じこもり、他者を寄せつけず、拒絶し続けてきた綾が、あんなふうに自然に笑って他人と交流する日が来るなんて。 柾冬がとことん綾を甘やかし、溺愛し、大切にしてきたからこそ、今のこの状態があるのだ。 「に遊びに来て、だなんて」 まるで新妻みたいだと言ったら柾冬が蕩ける笑顔で喜びそうだと思い、大惺はその様子を想像して笑った。
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