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「……あっ……あ……ああッ……」
息が出来ないくらいきつく抱きしめられ、深く繋がったまま綾は強い快感の波に揺られる。
「……柾冬さ……あッ……まさ……」
初めて抱き合った時から柾冬はまるでもうずっと前から綾を知っていたかのように、弱いところをついてくる。
そのキスも、腕も、優しいのに容赦なく綾を翻弄する。
「綾」
何より綾はその声に弱い。
低く甘い囁きと、耳元に吹きかけられる吐息だけで身も心も蕩けてしまう。
「……んん……ン……んうッ……」
強すぎる快感は苦痛にも似ている。
綾は激しく左右に首を振りながら柾冬にしがみついて瞳の端から涙を溢した。
柾冬はそれに気づくと綾を抱き竦めていた腕を解き、頬を濡らす涙にそっと唇を寄せた。
「……ごめん。少し飛ばしすぎた」
黒曜石のように冷たく冴えた瞳を潤ませ、切なげに眉を寄せる綾を見て、柾冬は制御を失いかけている自分に気づいて苦笑する。
「……煽ったのは……俺だから……」
熱く早い吐息の合間に綾が囁き、手を伸ばして柾冬の頬に触れた。
「君を前にすると、どうしても……」
「どうしても、なに?」
柾冬は自分の頬に触れている綾の手に長い指を絡めた。
「歯止めが効かなくなる」
「いいよ。めちゃくちゃにして」
「……また、そうやって煽る」
柾冬が困った顔をすると綾は艶っぽく笑って囁いた。
「あんたの困った顔見るの、好き」
「悪い子だ」
そう言うのと同時に柾冬がゆらりと動く。
「……んッ」
綾はハァッと大きく息をついたあと蠱惑的な瞳で柾冬を射抜いた。
「悪い子だと思うならお仕置きして」
柾冬は息を呑んでその瞳に魅入り、観念したように囁いた。
「……何がどうなっても、俺はもう謝らないからな」
そこから柾冬はいつもとは全く違う激しさで綾を抱いた。
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