act.6

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「……い……や……だめ……」 言葉とは裏腹に1度軀を繋げてしまったら綾はもう何も考えられなくなってしまう。 「ん……あ……ああッ」 ゆらゆらと揺さぶられ、弱いところを的確に攻められて頭が真っ白になる。 「そこ……だめ……ッ」 「ここ?」 「あッ!……だめって……」 自分が与える快感に身を捩り、恥じらう綾を見ると柾冬はたまらない気持ちになる。 「綾」 愛しくて愛しくて、もっと深く繋がりたくて、もっともっと綾を気持ち良くさせたくて……。 もどかしくなる。 「……耳……ずる……い……」 息も絶え絶えに綾が言う。 普段から柾冬が耳元に囁くと綾はすぐに身も心も蕩けたようになってしまう。 柾冬はそれをよくわかっていてわざと低い声でゆっくり喋り、囁きとともに息を吹きかけたりする。 「……綾、愛してる」 「……柾冬さ……あっ……柾冬さんッ」 激しく首を振りながら喘ぐ唇をキスで塞ぎ、柾冬はなおも甘く、低く囁き続ける。 「愛してる……綾……君だけ」 「……んん……んうッ……」 「一生君だけ……」 ゆるく優しく高みへと導かれて綾は朦朧とする意識のなか何度も恋人の名前を呼んだ。 そのたびに口づけを返され、深く強い快感を与えられ、最後は真っ白になる。 「俺も……あんた……だけ」 愛してる。 そう言って自分の上に崩れてきた綾の細い軀を受け止めて柾冬は喜びを噛みしめた。 気まぐれに部屋を訪れては束の間の契りを交わし、朝にはこの腕の中からいなくなっていた美しい黒猫。 捕まえたと思ったそばからするりと抜け出し、艶やかな流し目を残して去っていく。 焦らされ、煽られ、焦燥感に苛まれ、苦悩しながらようやくここまできた。 「やっと、手に入れた」 柾冬は腕の中で眠る綾の額にキスしながら囁く。 「一生離さないから覚悟して、綾」 「……ん」 綾は無意識に柾冬の胸に頬をつけて擦り寄ってくる。 艶やかな黒髪を撫でながら柾冬は目を閉じて大きな幸せに酔いしれた。
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