act.6

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  綾がふと目を覚ますとキッチンから堪らなくいい匂いがしてきて、グツグツと何かが煮える音が聞こえてくる。 身体の上に掛けられたカシミアの膝掛けに手で触れながらキッチンに立つ柾冬を見つめる。 綾は柾冬が料理をしている姿を見るのがとても好きで、いつも見惚れてしまう。 今日も柾冬が手元に集中していることを確かめてからそっとソファから起き出してキッチンに向かう。 そしてリビングとキッチンの境目の壁に隠れながら柾冬の横顔をじっと見つめる。 スラリとして完璧なスタイルに長い手足。少し癖のある長めの髪と甘いマスク。 シャツの袖をまくり、木ベラで鍋の中身をかき混ぜているだけなのに、とてつもなく絵になる。 知り合ってから結構長いのにいまだにその立ち姿や何気ない仕草に見惚れてしまう。 綾は柾冬も自分に一目惚れしてくれたこと、いつも自分を求めてくれること、そして奈津に自分のことをくださいと言ってくれて、こうしていま一緒に暮らせていること、すべてが奇跡のようで、夢のように思う。 「りょーう、またそんな可愛いことして。ちゃんと気づいてるよ?」 鍋に視線を落としたままで柾冬がそう言うと綾はびっくりして目を丸くする。 「……バレてた」 「こっちにおいで」 優しい声に呼ばれて綾は素直に柾冬のそばに寄っていく。
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