act.1

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それを見て大惺と唯夏と綾は目を丸くする。 強いカールのかかった赤茶色の長い髪を揺らし、常人ではとても着こなせない主張の強い柄と、目の覚めるような色合いのワンピースを着たその女性は、まるで女優のように迫力のある美女だった。 店にいた他の客たちも強烈なオーラを放つ美女と、誰もが見惚れる美形の柾冬とのツーショットに釘づけになった。 カウンターから少し離れたボックス席にいた稲見と深雪も驚いた様子で、柾冬と綾とを交互に見た。 「いらっしゃい」 神代だけがいつもと変わらない口調と笑顔でふたりを出迎えた。 「……マスター、助けてください」 柾冬は心底くたびれた様子でそう訴えたが、神代は軽やかに笑うだけだ。 「それは無理かな」 柾冬はカウンターの右端に立ってまじまじとふたりのことを見つめている綾に気づくと、女性の腕を振り解きながら名を呼んだ。 「綾」 そして綾のそばに寄ろうとしたところを女性に阻止される。 「あたしを放りだして逃げるつもり?」 真っ赤なルージュが引かれた形のいい唇を尖らせて、女性は再び柾冬の腕に自分の腕を絡めた。 「もう勘弁してくれ」 「嫌よ。やっと会えたんだから。離さないわ、絶対」 いつでも余裕ある立ち居振る舞いの柾冬が振り回されて弱る様子を、綾は珍しいものを見る目で凝視した。 そこで呆気にとられ、言葉を失っていた大惺の袖を唯夏が引っ張って合図する。 大惺はコホンとひとつ咳払いしてから柾冬に向かって言った。 「門倉さん、そちらは?」 「実家の隣の幼馴染です」
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