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――なんて、作り話にしてはディテールが粗い気もするが実際、人払いの役には立っていた。
「これだけ科学が発展してもまだユーレイは怖いってんだから、人間ってのはつくづく臆病な生きもんだって思うねぇ」
隣からそんな軽口が飛んできた。クラスメートの那須オクラだ。僕たちは人気のない旧校舎の二階、音楽室の真ん中あたりに直接、座り込んで作業している。
「科学が発展したがゆえに、逆に科学じゃ説明できないことがより怖くなったんだよ」
三月じゃ肝試しにはまだ早い。僕たちも誰にも邪魔されず作業に集中できるというものだ。監視カメラはハッキングして誰もいない映像を流しつづけていた。
それは腕のない人間の上半身に見えるだろう。
僕の着古したTシャツから出ている頭にはウィッグを被せ、シリコン製の皮膚にプラスチックの眼球を嵌め、鼻と口をそなえたそれは少女型のアンドロイドだった。
額には法令で義務付けられた古めかしいバーコードが載っている。
ちいさな鼻の奥には鼻腔があり、歯並びの奥には口腔もあり、舌があるし咽頭も声帯もある。胸部には肺代わりのポンプがあるし、ポンプの底は横隔膜を模した器官に繋がっている。
僕たちは人と同じ仕組みで発声するアンドロイドを造ろうとしている。
それどころか歌わせようとしている。
まず、ロボット工学三原則というものがある。
ひとつ、人間に危害を加えてはならない。
ふたつ、上記に反しないかぎり、人間の命令に従わなければならない。
みっつ、上記に反しないかぎり、自己の身を守らなければならない。
僕たちの造っているものに手足はないので、ひとまず僕に危害を加えるのは難しいだろう。
ロボット工学のコンテスト、高校生部門にエントリーしたのだ。
開催は七月。
僕たちの高校生活最後の夏だ。
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