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翌日、昼休みの教室内。
クラスメートの輪に加わらないまま、机上の端末とマイクロコンピュータを無線で接続し操作している。
立体映像に一文字ずつ高速で流れていく文字を噛み砕いていく。
音声学を復習しながら改善策を考えている。
輪に加われないんじゃない、加わらないのだ。コミュニケーションは齟齬なく円滑に進むのだから、僕がここで浮いているという事実はない。
そんななか、ここでもひときわ目立つ一群に目を遣る。映像は自動で停止する。
会話が漏れ聞こえてくる。
「ほんとすごかったよね!」
「ほんとほんと、マジでマジで!」
などという級友の賛辞に、
「ええ、そんなことないって〜」
宵谷ネハンが『照れ笑い』の表情を浮かべる横顔が見える。
そんなことないはずがない。
いまや、アンドロイドさえ歌手になれる世の中で歌唱力のみでのし上がってきた彼女がすごくないわけがない。
人間業と思えない。
「どうだい、やっこさんの様子は?」
気づけばオクラがお手洗いから戻ってきていた。僕の視線を辿ったのだろう。そんな問いを発した。
「もはや神だ」
神を模倣しようとしているのだ。
「そいつぁオオゴトだ」
オクラは肩をすくめて『当惑』の表情をしている。
すぐに人好きする笑顔に切り替え、「なに話してんの?」とその輪に加わりにいっていた。
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