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「その御方が村を出る時、儂にこう言ったのだ。『万が一、洞窟の入り口に呪符が貼り付けられるようなことがあればこの村を離れろ。出来るだけ遠くに行け』とな」
「え? 洞窟の入口にゴブリン避けの呪符を貼ったら、ゴブリンどもが出てこられなくなるんでしょ? そっちの方がいいんじゃないの?」
「話は最後まで聞くモノだ」
「……ごめんなさい」
確かに呪符は絶大な効果を発揮した。
時々集団で押し寄せては村を襲っていたゴブリンどもが、村の入口の門が見えるあたりから決して近付かなくなった。そればかりでなく、村人にちょっかいを出さないようにもなってきた。村人は安全に農作業をすることができ、町にゴブリン退治を依頼する必要もなくなった。
「村の入り口に呪符を貼っただけでスゴイ効果だね」
「ああ。……そうだ。あの御方の組んだ呪文は、それはそれは強力なものだったんだ」
「魔導師さんて本当は凄い人だったんだ。村の人たちは失礼なことをしたと反省しなくちゃいけないよね」
「……そう、殊勝な者たちだったらよかったのだがな」
ゴブリンどもと住み分けが出来たことで満足しておればよかったものを、やはりゴブリンの存在は視界に入る。直接渡り会うことも無くなれば、だんだん恐れの気持ちも薄らいでくる。これまでゴブリンどもから受けてきた仕打ちの数々を恨んで、一矢報いてやろうという思いが湧いてくる。
そこで、村人たちは久しぶりに町のギルドに頼んで勇者を募った。ゴブリンどもを洞窟の奥に追いやった上で、呪符をつかって封印してやろうと、そう画策したのだ。
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