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プロポーズ
大賀は夏稀の手紙を何度も読み返した。
あの手紙は大賀にとって、夏稀からのプロポーズだった。
例え夏稀にそんなつもりがなかったとしても・・・・・
大賀は以前から考えていたことを、夏稀に話すことにした。
いつかは話そうと決めていた、それがいつになるかわからなかったが、今が一番のチャンスだと思えた。
夏稀と家族になる、それはこれまで何度も口にした。
男同士のそれはいつもただの口約束に過ぎない、何かことが起こっても、二人の関係を公に証明できるものは皆無と言っていい。
夏稀を名実共に家族とするには、今はそれしか思いつかなかった。
大賀はその日、仕事を早めに切り上げ書類と夏稀への証しとなる物を買い求めた。
例え大賀がその気であっても、夏稀が同じとは限らない。
大賀は慎重に夏稀に話そうと思っていた。
夏稀と本当の家族になる為に、大賀の出来る唯一の方法、それは夏稀を入江 夏稀から大賀 夏稀に変えることだった。
夏稀の手紙をプロポーズと受け取り、今度は大賀から夏稀へ、プロポーズの答えを返す。
全ての準備を済ませ、大賀は帰宅した。
玄関でいつものように夏稀が迎えた。
誕生日のあの夜、いつになく乱れた夏稀が脳裏に浮かんだ。
泣きだした夏稀を抱きしめ、睫毛の涙を指で拭って額に口づけた。
腕を回し彼を抱いて寝室へ向かう、ベッドへ押し倒しゆっくりと唇を重ね、舌を貪るように長く深いキスを贈った。
二度とこの手の中から飛び立てないように、拒否する言葉を塞ぐようにもう一度深く口づけた。
大賀はいつもどこがで不安だった。
10歳の歳の差は大きく、今はまだ若くても日が達、年を重ねるごとにその差は大きくなると考えていた。
夏稀にいつか年若い恋人ができたら・・・・・到底自分には太刀打ちできない。
歳だけはどうにもならない問題だった。
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