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前置き 爪紅庵の色仕事0
ここはどこでもなく、どこにでもある場所。時が終わる頃に、どことなく現れる店、『爪紅庵』。
もし、この数寄屋門が開いていて、奥から何とも言えないよい香りがしてきたら――
それは、あなた様が今宵のお客様だということ。
さあ、ためらわず、ずずいと中までお入りくださいませ。
その良き香りはあなた様のため、サイが爪紅の色を調えているあかしでございます。
そして、わたくし、いろはが、今宵、あなた様の望みをひとつだけ叶える爪紅を施しましょう。
お代はいかほどか? そう、そこがとても大事なところ。
『爪紅庵』の色しごとは、お代にあなたの『欲』を頂戴したく存じます――
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