その川を越えたずっと遠く

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 そして、時はきた。  ドキドキしながら、机の上に置いたぴかぴかの機器を手に取る。  スマートフォン。  数日前、母が買ってきてくれた。  思えば、北の町はスマホやパソコンの普及率が異常に低かった。両親は「ガラケー」を使い続けていたし、タブレット学習もない。  けれどもう、そんな原始の生活とはさよならだ。両親はまだスマホを持っておらず、みかるがいちばん乗り。家のルーターは自治体から借りているもので、学タブ以外には使えないから、データ量を節約して使わなきゃいけない。それで、少し使い方を練習したほかは、この晩までほとんど手をつけなかった。  とうとう、解禁だ。  動画アプリのアイコンに触れる。  そして、アズンバのチャンネルを開く。  アズンバは動物の着ぐるみ五匹衆で、毎週水曜の夜十時、三時間限定で動画を公開しているというのは、軽くリサーチできていた。  十時になり、動画があらわれた。すかさずひらけば、夢にまで見たアズンバが、みかるの目の前で動き出した――  と、そのときである。  ぎょわーー!  というような奇声が部屋の外からとどろき、身体ははねあがった。あわてて動画を止める。  ようすを見に行こうかと迷っていると、ずるり、ずるり、と奇妙な音が近づいてきて、ノックもなしに扉ががちゃりと開いた。
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