狐の嫁入り泣く娘

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狐の嫁入り泣く娘

犀花の居場所は、どこにもない。 かといって、自宅にばかりいる訳にもいかず、真面目に、学校には、顔を出すようにしている。 が、 憂鬱な事がある。 最近、目をつけられたと感じる少年がいる。 柊雨と言う。 「話があるんだけど」 位陰気な男。 何度か、無視していたが、今日は、譲らない様子だった。あまり、他の注目を浴びたくないし、これがキッカケで、また、新たな虐めになるのも、嫌で、犀花は、無視をして席を立つ事にした。 「無視するの?」 柊雨は、慌てて教室から出ていく、犀花の後を追いかけていった。 「来ないで」 屋上へと続く階段を駆け上がり、扉を開く。立ち入り禁止のロープを飛び越え、吹き抜けになっているドームがいくつかある屋上の隠れ家へと足を早めた。 「もう、誰かが見ていたら、また、厄介な事になるの」 犀花は、ついて来ないでと言わんばかりに、ヒステリックな声を上げた。こんな所は、母親に似ていて自分でも嫌いだ。 「あんたなんて、産むんじゃなかった」 母親は、犀花の事を、あんたと言う。 「恐ろしい。パパにそっくり」 母親の言葉が、呪いの言葉のように、のしかかる。パパに似てる?幼い頃の記憶は、あまりなく、自分が、覚えているのは、優しかった父親の姿。 恐ろしいという母親を憎く感じてしまう。 「大嫌い」 母親は、飲んだくれ、空き瓶を犀花に投げつけた。 「誰でもいいから、自分を愛してほしい」 切望していた。が、実際、自分は、人と交流するのは、苦手だった。この柊雨も、例外でなく、どう話したら、いいかわからない。慌てて、ヘッドホンで、会話を避けようとした。 「今日の夜は、どこにも、出かけない方がいい」 柊雨は、帰宅してからは、自宅にいるように言った。空は、澄み渡って、晴れているのに、急に雨が降り出してきた。 「狐の嫁入り・・知ってる?」 祖母に育てられた犀花は、知っていると言った顔をした。 「都会にも、狐っているんだよ」 柊雨は、それを伝えると、今来た通路を引き返していった。晴れているのに、雨が、容赦なく降り始めていた。犀花は、その後、いつもの様に、何もなかったように、教室の隅に戻っていった。雨に濡れていたが、担任も、何も、声をかけようとしなかった。 「みても、見ぬふり」 ポツンと呟いてみた。誰しもが、面倒な事に、巻き込まれないように、生活している。自分も、同じ立場だったら、そうするに違いない。その後は、何も起きる事なく、1日が終わり、犀花は、誰も待つ事のない自宅に、帰っていった。 いつもの通り、夕食はなく、千円だけが置いてあった。お金が、置いてあるだけまし。幼い頃は、よく置き去りにされたっけ。1人で、適当に、食事を作り、用意してあった千円は、財布にしまった。後で、使う時があるかもしれない。さっさと、宿題をこなし、早めに床に着く事にした。 「夜中に外に出るわけないじゃない」 犀花は、そう呟いて、眠りについた。どうか、明日は、平和であるますように。 そう、願い眠りについたが、夜中過ぎにドアを開ける姿が、あった。 犀花、本人であった。
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