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 あれから京香に会えていない。  お互い忙しいから、というのは口実だろう。それで良いと思う。  彼女が幸せならばそれでいいの、そう言い聞かせている。  私の方もいよいよの開店準備で寂しさは紛れているし、ビアンバーも癒してくれる。ただしもう、一夜限りの遊びは控えている。そういう気分じゃないから。  開店日は、ちょっとしたパーティーみたいになっていた。お世話になった人たちに挨拶やおもてなしをしていた。  そんな時、後ろ姿を見かけた。急いで受付へ行くとお花を預かったという。  待ってよ!  パンプスを履いているけど、追いつくためには走らないと。 「うさちゃーん」  何も望まない、会いに来てくれただけで嬉しいから。友達としてまた会えたら万々歳だ。 「私、真紘さんのこと好きです。でもやっぱりよくわからなくて」  彼女も今日まで悩んでいたんだとわかる。  それでいい、嫌われてないだけで充分なんだよ。  私たちはまた友達として付き合うことにした。  夕食を共にしたり、新店舗にも足を運んでくれたり。 「ここはいろんな靴があるんですねぇ」 「そうなのよ」  ヒールの高いパンプスだけじゃなく、カジュアルなものやスニーカー、ランニングシューズや登山靴まで幅広く置いている。ターゲットとなる年代もバラバラだが、それ故に家族で来店しても飽きさせない、そういうお店だ。 「良いですねぇ」  いつか、彼女が夫や子供を連れて来ても、私がしっかり応対したいと思っている。 「ハッピーバースデー、京香」  誕生日当日は彼とデートだろうから、その数日前に夕食に誘った。  美味しいものをお取り寄せして、何品かは私が料理をする。私からのプレゼントは残るものではなく、食べたらなくなるものがいいと思ったから。  私の手料理の方が美味しいと言って食べてくれるなら、心を込めて作った甲斐があったというものだ。  話を聞くと、誕生日には豪華なディナーが待っているようで、きっとプロポーズなりなんなりの進展がありそう。  私は京香の幸せを願って見守るしかないのだと改めて思うのだ。
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