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 連絡もなく突然尋ねてくるなんて珍しいこと。それなのに、迷惑じゃないですか? なんて、よほど切羽詰まっているのがわかる。私を頼ってくれるなんて、迷惑なわけないじゃない。  理由を聞けば、喧嘩してお店を飛び出してきたと言う。  京香の誕生日で大事な日だったろうに、辛かったね悲しかったね。私に出来ることなら何でもしてあげたいよ。 「大丈夫? お腹空いてる? お風呂で温まる? 話も聞くよ?」 「じゃあ、全部。フルコースで」  可愛らしいお願いに、私は目尻が下がる。  よし、まずはお風呂の用意をする。入っている間に軽く食べられるものを作って、食べながら話を聞こうじゃないか。  あ、そうだ。ボディソープ切れてたっけ。買い置きのものを届けようとドアを開けたら見えてしまった、京香の下着姿。 「あ、ごめん」  すぐにドアは閉めたけど、その姿はしっかりと私の目に焼きついた。  私と一緒に買ったランジェリーではなかった、今日は勝負の日ではないの? それともああいう清楚な感じのが彼の好みなの?  あぁダメだ、そんな事を考える前に何か作ろう、京香のために。  冷蔵庫の中にある材料で何か温かいもの……豚汁がいいかな。あとは漬けてあったお魚を焼いて、きんぴらも作ろうかな。  美味しいって食べてくれるから、少しは気持ちも落ち着いたのかな。  ゆっくりと、今日あった話もしてくれた。  なんの前触れもなくご両親に紹介されたこと、もう結婚する体で話が進んでいたこと、京香一人が置いてけぼりの状態だったようだ。  プロポーズ前にそんなこと……  完全に彼の勇み足ね。  だけれどきっと彼は焦っていたんだと思う、京香が綺麗になったから離れてしまうと思ったんじゃないかな。  そんな私の想像を話すと京香は驚いていて、じっと私を見つめる。 「え?」  どうしたの? 「なんで?」  いや、なんでって。 「なにが?」 「真紘さんは、なんで私を好きになったの? いつから?」  いつからかと問われれば、初めて会った時からなのだけど。  ウィンドウを眺めていた京香を見つけたあの瞬間を私ははっきり覚えている。 「ーー入ってきてくれないかなって思ってた。そしたら私が絶対応対するって決めてた」 「だから、なんで」  なんでかって聞かれたら、きっかけは…… 「初恋の人に似てたの」  だけど、それはきっかけにすぎなくて。言葉を交わしたり何度か会ったりするうちにどんどん惹かれていったのは京香自身なわけで。  私は京香とのいろんな出来事をあれこれ思い出していただけなのに、貴女は誤解してたのね。
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