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「最近は週末なんですね」 「え?」  いつものビアンバー、お酒と共にバーテンダーに声をかけられた。そういえばと普段より賑やかな店内を見渡す。 「曜日忘れるほど忙しいんですか?」 「まぁそうね、ちょっとトラブルもあってね」  それもあるけど、週末は彼女をーーというか彼女が彼と会っていることをーー忘れたくて来ているのかもしれない。それなのに、忘れさせてくれる相手には巡り会えず。  あれだけ会っていた彼女とも距離を置いている。  仕事が寂しさを紛らわしてくれると思っていたのに、信頼していた部下に裏切られるというダブルパンチ、心身ともに疲弊をしている自覚はある。 「あ、お姉さん!」  私にかけられた言葉には聞こえなくて流していたが。 「えぇ忘れられてる? お姉さんってば」 「あら」  振り向いたら、いつかの女の子。名前は……聞いてなかったか。 「お久しぶりです、あれなんか……老けました?」 「は? そういうこと言う?」  そりゃ確かに最近は、自分でも目のクマが気になってるけどさ。そういえばこの子、正直が取り柄とか言ってたっけ。我ながらよく覚えているのは身体の相性が良かったからなのだけど。 「えへへ、一杯飲ませてもらっていいですか?」 「いいわよ、何がいいの?」 「じゃ、同じので」 「貴女は元気そうね」 「はい、お姉さんに会えたから、ふふ」 「若いっていいわねぇ」 「そんなおばさんみたいなこと言わないでくださいよぉ」  もう、お姉さんよりおばさんの方がしっくりくる歳なんだけどね。自虐な苦笑いでしか返せなかった。 「あれ、本気で病んでます? 私の元気を分けてあげましょうか?」  手を重ねられた。これはお誘い? 「老けたおばさんでいいなら」 「ごめん、良くなかった?」  その子は事後、目尻に涙を滲ませていた。私だけ満足していたのだろうか。 「違うよ、身体は気持ち良かったよ。だけどお姉さんの心の中に誰かがいるから。忘れさせてあげたかったのに私じゃ力不足だったね」 「そんなことは……」 「嘘は嫌」 「ごめん」 「本当はね、あれからお姉さんを探してたの、あの店にも何度も通ってた。今夜ようやく会えて嬉しかったのにな」 「ごめん」 「重いの、嫌いですよね。大丈夫ですよ、もう追いかけませんから。思い出に名前だけ教えてください」 「真紘よ」 「まひろさん、ありがとう」  いい子だと思う。こんな子を好きになれたら楽なんだろうな。  でも……
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