引っ越すなんてイヤ

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「ちょっとだけね。でも、おばあちゃん強いから大丈夫だよ。ありがとうね」  父が祖母の顔を覗き込むように見つめた。 「お義母さん、病院には行かなくていいんですか?」 「たぶん大丈夫。わざわざ来てもらって申し訳ないわねえ」 「こんな時になんですが……もしお義母さんさえよければ、俺たちと一緒に住みませんか。俺たちに遠慮する必要はまったくないんですよ」 「ありがたいけど、私はこの家を離れたくないの。気持ちだけもらっておくわ」  そういえば昔から祖母は、頑固なところがある人だった。  以前、この家に遊びに来た時、僕が家の中を探検しようと思い立ち、和室の押し入れを開けようとしたら、祖母は怖い顔をして「ダメだよ、他人の家を勝手に歩き回っちゃ」と怒るのだ。  少しぐらいいいじゃん……と僕が言っても、祖母は頑なに首を横に振るのだった。  そんな祖母の頑固さに、父も少し弱っているようだ。僕のほうをちらっと見て、目くばせをする。どうやら助け舟を出せということらしい。  僕は祖母に言った。 「お父さんの言う通りだよ。僕だっておばあちゃんと暮らしたいよ。ね、一緒に暮らそうよ」
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