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「ううん、ダメ。おばあちゃんはここで一人で暮らしたいのよ。引っ越すなんて絶対にイヤ……」
どうやら祖母は意見を変えるつもりはないようだ。
そのことを父と母も悟ったらしく、小さく溜め息をついた。
幸い、祖母のケガは大したことがないようだったので、僕たちは夜が明けるまで待って、また車で自宅に引き返した。
それから二日後のこと。
僕が学校から帰ると、母がリビングで誰かと電話で話していた。
「はい、そうです。どうぞよろしくお願いいたします」
話し終えたらしく電話を切った。
僕は聞いた。
「誰と話してたの?」
「市役所の人よ。老人ホームについて聞いてみたの」
「老人ホーム?」
「うん。昨夜、お父さんと話し合ったのよ。おばあちゃんがまたケガでもしたら困るから、老人ホームに入ってもらうのはどうかなって」
「おばあちゃん嫌がるでしょ」
「……と思う。まだ検討の段階だから、はっきり決まったわけじゃないんだけどね」
「あれだけ引っ越すのを嫌がってたんだから難しいと僕も思うよ。でもさ、ずっと疑問だったんだけど、どうしてあの家に住むことにあんなにこだわるのかな?」
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