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退治
武人とやせ神が互いににらみ合い、広場は緊張感で張り詰めていた。そんな中、踊り終えた坊主が俺に向かって高らかに宣言した。
「これより精霊増幅の儀に入ります。あちらの清めの水を祭壇に振りかけてください」
彼が指差す先には、丸い桶に満タンに入った清めの水が置かれていた。
(これを使えということか……)
俺は急いで桶を持ち上げ、水の溢れる桶を片腕で支えながら、もう片方の手で水を祭壇に向かって振りかけ始めた。しかし、勢い余って祭壇の前に浮いている武人にも水がかかってしまう。すると、武人の周囲から強烈な光が溢れ出し、広場を包み込んだ。
光が収まると、武人は3人に増えていた。
「「何イィィ!?」」
想定外の展開に、やせ神たちは動揺していた。分裂するはずのない存在が、突然3体に増えたのだから。そして、その驚く暇もなく、3体の武人は瞬速でやせ神を四方から囲い、一斉に剣を振り下ろした。
3方向からの衝撃波が一気にやせ神たちに襲いかかる。
「「グギギャャャー!」」
やせ神たちは一瞬で消し飛び、跡形もなくなってしまった。
「よしっ! やせ神は消えた。これで滅亡の危機は免れたっ!」
俺は安堵のため息を漏らし、胸を撫で下ろした。しかし、まだ儀式は終わっていない。清めの水を祭壇に振りかけ続けると、武人にも水が振りかかり、再び広場全体を覆う光が現れた。光が収まると、武人の数は6人に増えていた。
(さらに増えた!?)
俺が驚いている間に、武人たちはこちらに向かって剣を構えた。
「ちょー待てーっ! 俺らは敵やないっ!」
だが、武人たちは俺の言葉には反応せず、一斉に声を上げた。
「「「「「「我が名はドレム!!」」」」」」
その言葉と同時に、ドレムと名乗る武人たちは剣を振り上げ、強烈な衝撃波を放った。その瞬間、俺は夢解師が言っていたことを走馬灯のように思い出した。
「この村には、これから3ドレムの間、これまでにない大繁栄を迎えるでしょう。しかし、その後の3ドレムには、かつてない滅亡の危機が訪れます。繁栄の時期の記憶さえ消し去ってしまうほどの危機です」
(ドレムって、こいつらの事やったんかーっ!?)
衝撃波が広場全体を襲い、轟音と共に砂煙が舞い上がった。
「ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ーーっ!!」
その瞬間、断末魔をあげた後に俺は意識を失い、暗闇に引きずり込まれていった。
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