幸せ者しかいない空間

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彼とはまだ、つきあいたて。 初めてのドライブ、シートの近さにドキドキする。 ここは二人だけの空間なのが嬉しい。 運転中の彼は前ばかりを見ていて、遠慮せずに横顔を眺めていられる。 睫毛が長いな。 ラジオから懐かしい曲が流れてきた。 昔、好きだったな。 久しぶり、ちょっと口ずさみたい。 ここで急に歌ったら、彼はどう思うだろ? まだ、あまり彼のことを知らない。 どんな反応をする人なんだろ? サビになった。 ちょっと歌ってみる。 勇気を出してみた。 彼は何も言わない。 表情も変わらない。 よく分からない。 まあ、いっか。 歌い続ける。 「今、歌ってる?」 急にこっちを見る彼。 歌ったまま、コクっと頷く。 「歌、上手だから分からなかった。 こういう歌なのかと思ってたよ。 途中で、隣から聞こえるって気づいたんだ。 こんな可愛くて、歌声まで可愛いの? オレ、こんな可愛い子とつきあえてるんだ、幸せ者だな」 そんな風に言ってもらえるなんて、幸せです。
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