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第三話 雨は心を冷ます
ここは日本と違いどこでもチュッチュっしている。
あたしもトムとそれそろかな。
今日は晴天。
青空の元、公園でトムとフリスビーをして遊んだ。
この公園は中央に芝を植えた広場があり、レジャーシートを敷き寝転んでいる人がいたり、子供達がはしゃいでいる。
芝の広場の周りは舗装された歩道がありジョギングをしている人も少なくない。
あたしの知っている限り横浜の山下公園に似ている。
フリスビーで遊び息を切らしたあたし達はベンチに座り話している。
「トム、喉乾いたでしょ。あたし何か買ってくるよ」
トムは急に真顔になりあたしを見つめる。
あたしは若干目を逸らし、トムの次の行動を待つ。
「I Love you」
来た来た。
肩を抱かれ見つめ合い唇が近づきチュッと行くんじゃないかしら。
トムはあたしの想像通りあたしの肩を抱き、あたしの目を見つめる。
「マナミ愛しているんだ。すごく愛しているんだ」
あたしはゆっくり視線を動かしトムの目を見つめる。
目と目が合い、彼の顔が近づいて来た。
ついに来たわ。
トムが右に顔を傾けたので、左に顔を傾けた。
唇が近づく、数センチ、数ミリ。
もうすぐよ。
ソフトタッチから激しくなるんだわ。
右目、目尻にポツリと冷たい感触があった。
ん?雨?
彼の息遣いが聞こえる。
あたしの心臓はバクバク。
あたしの感情が高まって来たぁ〜。
ポツリ。ポツリ。
彼も気づいたみたい。
唇が数ミリの所で同時に目線を空に。
先程まで真っ青だった空が真っ暗に。
雨の粒が徐々に多くなって来た。
「マナミ。雨だよ」
知ってるよ。知ってます!
トム、続きを…
トムは先ほどの位置に戻り再び空を見上げる。
あたしも仕方なく元の位置に戻った。
「マナミ、避難しよう」
はぁ?
な、何、爆弾でも降ってくると思ってるの?
ねぇ、みんなびしょ濡れのままイチャイチャしているよっ!
「えっ、どこに?」
「あそこが良い」
彼が指す方向はどこかの軒下だった。
なるほど!
外は雨だけど軒下で暑いデイトをするのね。
OK。あたしはOKよ。
あたしとトムは小走りで軒下まで走った。
「濡れちゃったね。マナミは大丈夫?」
「うん。平気」
さあ、トム続きを…
なかなか来ない。
彼は軒下から空を見上げ、顰めっ面をしている。
そしてなんたることか、彼はあり得ないことを言った。
「傘を買ってくるよ」
はぁ。
あたしのハートは雨のように冷め切ってしまった。
トムは豪雨の中軒下を出て行った。
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