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「高校生ならもっと他に遊ぶとこあるんじゃないの」
「いいじゃん、俺はこういうレトロモダンな場所が好みなの」
「モダンとか言っちゃってぇ、なんかウケんだけど」
絵梨奈さんは笑いながら、冷凍庫を開けて大箱のバニラアイスを取り出す。
「あ、今日は俺コーヒーフロートにする」
「いつものクリームソーダじゃなくて?」
「子供扱いしないでよ」
「はいはい」
絵梨奈さんが笑うと、頬にえくぼができる。
鑑賞料を払っても惜しくないと思うほど、俺はそのえくぼが好きだ。
「あれ、星野さんは今日いないの?」
「今日は半休取ってんの。掛け持ち始めるんだってさ」
「ふうん」
手際よくアイスコーヒーにバニラアイスを乗せて、絵梨奈さんはカウンターの上にグラスを置いた。
「ほい、コーヒーフロートできたよ」
俺はグラスを受け取ると、ストローが入っている袋をびりっと破いた。
それと同時に背後でドアベルの音が鳴り響く。
「噂をすればじゃん」
ストローを握ったまま振り向くと、星野さんが入り口に立っていた。
星野さんはこの店で働いているドロイドだ。
広い肩幅と長い手足、紳士らしい出立ちでスタイルは抜群にいいのだが、首から上がレトロなルーレット式おみくじ機になっている。
『ただいま戻りました』
「おかえりぃ」
ゆるっとした口調で絵梨奈さんがそう答える。
星野さんは椅子の背もたれに掛かっていた前掛けを手に取った。
「掛け持ち、どうだった?」
『私には少々難易度が高かったと思います』
俺は長身な星野さんを見上げながら俺はたずねてみた。
「どんな仕事なの?」
それを聞いた絵梨奈さんがカウンターから声を掛けてくる。
「ベビーシッターだってさ」
「……なんか、想像つかないな」
小さな赤ちゃんを抱っこする星野さんを想像してみるが、違和感が凄い。
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