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その後、私が副社長を連れてやってきたのは、小さな個人経営の居酒屋だった。
扉をくぐれば、見知った店員の女性が駆けてきてくれる。
「あら、香坂さん。いらっしゃい」
「突然ごめんなさい。……奥のお部屋、空いてる?」
この居酒屋には奥に個室が一室だけある。そこならば、ゆっくりと食事も出来るだろうと思ったのだ。
「空いてますよ。準備してきますので、少し待っててください」
「うん、よろしく」
彼女を送りだせば、副社長が私の隣に並ばれた。
……並べば余計になんというか、彼の背丈の高さを実感してしまう。
「ここ、よく来るんですか?」
彼がそう問いかけてくる。なので、私は頷いた。
「はい。ここ、私の親戚が経営しているんです」
親戚……と言っても、そこまで近いものじゃない。
ただ、幼少期に度々遊んでもらった『親戚のお姉ちゃん』が旦那さんと経営している。だから、よく来るのだと。
そう説明すれば、副社長は大きく頷いてくれた。
「その、なんでしょうか。こういう場所でも、大丈夫でしょうか……?」
なんだか今更不安になって、そう問いかけてみる。副社長はきょろきょろと店内を見ているようだけれど、しばらくして私に視線を向けてこられた。
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