第1章

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 その後、私が副社長を連れてやってきたのは、小さな個人経営の居酒屋だった。  扉をくぐれば、見知った店員の女性が駆けてきてくれる。 「あら、香坂さん。いらっしゃい」 「突然ごめんなさい。……奥のお部屋、空いてる?」  この居酒屋には奥に個室が一室だけある。そこならば、ゆっくりと食事も出来るだろうと思ったのだ。 「空いてますよ。準備してきますので、少し待っててください」 「うん、よろしく」  彼女を送りだせば、副社長が私の隣に並ばれた。  ……並べば余計になんというか、彼の背丈の高さを実感してしまう。 「ここ、よく来るんですか?」  彼がそう問いかけてくる。なので、私は頷いた。 「はい。ここ、私の親戚が経営しているんです」  親戚……と言っても、そこまで近いものじゃない。  ただ、幼少期に度々遊んでもらった『親戚のお姉ちゃん』が旦那さんと経営している。だから、よく来るのだと。  そう説明すれば、副社長は大きく頷いてくれた。 「その、なんでしょうか。こういう場所でも、大丈夫でしょうか……?」  なんだか今更不安になって、そう問いかけてみる。副社長はきょろきょろと店内を見ているようだけれど、しばらくして私に視線を向けてこられた。
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