第1章

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「その、出来れば、社外では俺のことを『副社長』と呼ばないで欲しいんです」  何処か真剣な面持ちで、彼がそうおっしゃる。  ……私は、どうしてか意味がわからなくて小首をかしげてしまった。 「いえ、無理だったら構いません。ただ、なんていうか、慣れなくて。プライベートと仕事は別けたいといいますか……」 「……そういうことですか」  ならば、私は従うだけだ。  そう思って大きく頷けば、彼が少しだけ表情を緩めてくださった。……そういう表情、少し子供っぽいなぁって。 「では、なんと呼べばいいでしょうか……?」  無難に「真田さん」でいいのだろうか? いや、むしろそれ以外の呼び方なんてわからない。 「……好きに呼んでくれて、構わないです。ただ」 「……ただ?」 「できれば、名前で呼んでくれたら嬉しいです」  ……ということは「真田さん」ではないということだろう。 「……丞さん?」
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