第1章

26/32
前へ
/58ページ
次へ
「これ、感じ悪くなかったよね……?」  とくとくと早足に音を鳴らす心臓。その音を感じつつ、私はそう呟いた。  そうだ。私の処女云々よりも、今後も彼と顔を合わせるのだ。気まずくならないようにせねばならない。 「一夜だけの関係でも、別に私は良いんだけど……」  ……本心ではそれは嫌だって思ってる。でも、丞さんほどの人になれば、より取り見取りだ。  なにも私を選ぶ必要なんてない。それだけは、わかる。  そんなことを考えて、私はショーツを履いて、ふと気が付く。 「もしかして、ブラ忘れた……?」  今更この格好で戻るの、気まずい……。  でも、戻らなくちゃ。ブラウスだけ着るかな。  そんなことを考えていると、扉がノックされる。私は慌てて返事をする。 「は、はい!」  上ずったような声だった。緊張がこれでもかというほどに伝わる声で、なんだか恥ずかしい。  そんな私を他所に、扉が開いて丞さんが顔を見せる。 「その、あんまり、こういうの持ってくるのどうかと思ったんですけど……」  彼が気まずそうに視線を逸らして、ぶっきらぼうに私に手を差し出す。そこには、私のブラがあった。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3554人が本棚に入れています
本棚に追加