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「どうぞ」
「……あ、どうも」
彼女の笑みに押されて、私は頷く。女性は笑みを崩さない。
「私、雪野 英麻って言います」
「……香坂、杏珠です」
名乗られると、こちらも名乗らないとならない。それが礼儀だから。
「真田さんとは、どういう関係なんですか? お付き合いとか、されてます?」
「……えっと」
でも、さすがにそこまでぐいぐいと来られると困る。
私が困ったような表情をしていると、丞さんが私と雪野さんの間に手を挟む。
「そういう質問、やめてください」
丞さんがはっきりとそう言って、お冷を口に運ぶ。
雪野さんは、少し不満そうな表情を浮かべるものの、身を引いていた。
「すみません、彼女は割とフレンドリーで。あれが通常運転なんです」
「……そ、そう、ですか」
雪野さんは既婚者。
それはわかっていても、なんだかもやもやとしたものが取れてくれない。
だって、それだけ親しいっていうことでしょう?
(なんて、付き合っているわけでもないのに聞くのは、ダメだわ……)
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