第2章

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「どうぞ」 「……あ、どうも」  彼女の笑みに押されて、私は頷く。女性は笑みを崩さない。 「私、雪野(ゆきの) 英麻(えま)って言います」 「……香坂、杏珠です」  名乗られると、こちらも名乗らないとならない。それが礼儀だから。 「真田さんとは、どういう関係なんですか? お付き合いとか、されてます?」 「……えっと」  でも、さすがにそこまでぐいぐいと来られると困る。  私が困ったような表情をしていると、丞さんが私と雪野さんの間に手を挟む。 「そういう質問、やめてください」  丞さんがはっきりとそう言って、お冷を口に運ぶ。  雪野さんは、少し不満そうな表情を浮かべるものの、身を引いていた。 「すみません、彼女は割とフレンドリーで。あれが通常運転なんです」 「……そ、そう、ですか」  雪野さんは既婚者。  それはわかっていても、なんだかもやもやとしたものが取れてくれない。  だって、それだけ親しいっていうことでしょう? (なんて、付き合っているわけでもないのに聞くのは、ダメだわ……)
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