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私たちはそこまで親しいわけじゃない――と思っていると。ふと、お店の扉が開く。
そちらに視線を向けると、そこには丞さんよりも少し年上に見える男の人。
「……丞、早かったな」
その男性は私たちのほうをみて、そう呟く。
多分だけれど、このお人が例の『しーくん』だろう。
「えぇ、まぁ。……センパイは相変わらずマイペースで」
「それは褒めているのか? 貶しているのか?」
「……さぁ」
丞さんが視線を逸らして、そう言う。……絶対に、誤魔化した。誤魔化しにもなっていないと思うけれど。
「真田さんが云々じゃなくて、しーくんが遅いだけだよ。……急に買い出しに行くなんて、有り得ない」
「こいつだからだよ。……ほかの客だったら、さすがにいる」
「それはそれでひどいよ」
これに関しては、雪野さんに完全同意だった。
けど、丞さんの態度を見るに、これは通常運転のようだ。……うん、そうなんだろう。
「ところで、そっちの女性は誰だ? まさか、丞の彼女か……?」
「……いや、そういうわけでは」
「生きてきてろくに彼女も作ったことのない後輩に春が来て、俺は嬉しいよ」
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