第2章

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 さも当然のように『しーくん』と呼ばれた男性がそう言う。  ……というか、というか。 (丞さんって、彼女いたことないの……?)  いやいやいや、さすがに彼が知らないだけだろう。  だって、こんなにもかっこいいんだもの。性格だって物腰柔らかで丁寧だし。  少し関わるだけで、すごく気持ちが惹かれるはずなのに。 「おっと、勝手に話を進めたら彼女が置いてきぼりになってしまうな。俺は雪野 紫苑(しおん)。この店のオーナーだ」 「……香坂、杏珠です」  慌てて現実に戻ってきて、私は彼の自己紹介を聞く。そのまま、自己紹介を返した。  彼――もうこの際旦那さんと呼ぶ――は、その鋭い目を細めながら丞さんを見る。その口元はにやにやとしているというか。なんていうか、意地の悪そうな雰囲気。 「俺はこいつの学生時代の先輩でな。趣味で妻の英麻とここを切り盛りしているんだ」  ちらりと旦那さんが奥さんのほうを見ると、彼女は何処か頬を赤らめている。  その姿は同性の私から見てもとても可愛い。こんな妹欲しいなぁって思えるような人。
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