第2章

23/24
前へ
/58ページ
次へ
「ところで、だが。香坂さんは、丞のどういうところが好きだ? この男は無愛想だし口下手だしな。気の利いたことは出来んだろう」 「……いえ、そういう、ことでは」  旦那さんも奥さんも、勘違いされている。  私は丞さんの彼女でも何でもない。ただの部下であり、一夜を共にした仲というだけだ。……後半は、口が裂けても言えないけれど。 「あの、センパイ。俺がいつ、彼女を恋人だって紹介しましたか?」 「なんだ、つまらん。お前の人生初の恋人を祝ってやろうと思ったのに」  旦那さんがつまらなさそうに唇を尖らせた。……このお人、丞さんよりも年上なのに。何処か仕草とか、諸々が子供っぽい。奥さんのほうがしっかりしているのではないか。そう思えるほどだ。 「……それと、先ほどから余計なことばっかり口にしてますけれど」 「事実だろう。お前に女の陰があったことなど、俺が知る限り一度もない」  はっきりと告げられた言葉。私は丞さんに視線を送る。彼は気まずそうに視線を逸らした後、こくんと首を縦に振った。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3416人が本棚に入れています
本棚に追加