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そして、と考えて脳裏に浮かぶのは永倉だ。
永倉は当初から山中犯人説を否定していた。そして捜査本部がそれを覆さないと知るといなや、あっさりと退官し、こともあろうか真利亜の両親が経営するパン屋に転職した。
なぜ転職したのか聞いたことはないし、今後も聞くつもりはない。もしかしたら優樹菜を警戒して、母・真利亜を亡くした灯里を守るために転職した。そういう可能性も無きにしも非ずだが、それを聞くのは野暮だ。
「優樹菜はやっぱり知ってるのよね」
イスに座り直し、有沢が持つスマホに目を落とす。
憧れのモデルにばったり会って、写真を頼んだら撮ってくれた。そんな一枚に見える。この写真を撮った当時、真利亜は読モではなく現役のモデルで、優樹菜は真利亜に憧れる中学生だった。この写真から二十年ほど後に真利亜は殺害され、優樹菜は参考人となるには夢にも思わなかっただろう。
「でしょうね。知ってるということを、こっちにアピールしてきた。ほんと、御園さんが言うように喧嘩売ってると言っても過言ではないですよね」
「旦那さんの不倫相手だった優樹菜に喧嘩売って、読モ妻殺人事件では警察に喧嘩売るようなことして。喧嘩売る以外に話し合いにつく方法を知らないの?」
「そうですよね。不倫なんて弁護士さんに間に入ってもらって、香織さんに慰謝料請求して旦那さんは針の筵状態にさせておいた方がダメージ大きそうですよね」
「わざわざ身重の身体で出向かなくてもいいしね。旦那さん、優樹菜が香織さんのところに行ったの知ってるのかしら」
「知らないんじゃないですか? 薫くん情報だと『仕事辞めます。あなたとの関係も清算します。奥さんに言う気はありませんから。話があるなら弁護士を通してください』って告げて、その場で三宅さんの連絡先すべて消してきたそうですよ」
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