魔法の食パン

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 今の時代なら、会いに行けるアイドルと言われる地下アイドルがいる。彼らに会いに行き、一緒に写真を撮る代金を稼ぐために売春をする子もいる。または親がクレジットカードの引き落とし額を見て青くなり、子どもが親のカードを勝手に使っていたと気づくケースもあると言う。  真利亜がモデルをしていた時代はどうか。御園も優樹菜に近い年齢だが、会いに行ける地下アイドルの存在は聞いた覚えがない。まして当時の真利亜は読モではなく、モデルとして第一線で活躍していた。アーティストやアイドルならライブやグッズの購入もあるが、モデルはそうではないだろう。モデルとコラボした服や化粧品はあったかもしれない。けれど頑張ってお小遣いをためれば変えない値段でもなかったはずだ。  真利亜の事件に専念しなければならないのに、優樹菜を自嘲させたのが何かも気になってしまう。それは真利亜の事件に関わりがあるのか否か、まだわからない。 「モデルになりたかった?」 「モデルになりたいというより、MALIAちゃんの近くにいたかった。そのためにはモデルになるのが手っ取り早いと思ったんですよね。子どもの考えることなんて安直ですよね」  それは大人にならなければわからないことだ。子どもは子どもなりに一生懸命考えて、最善の策だと思ってしまう。そしてそのまま行動に移し、大人に怒られるまでがセットだ。  かく言う御園にだって、子どもの頃は自分の考えが最高に思えて行動した結果、親に怒られたことは多々ある。多かれ少なかれ、大人は誰しも思い当たることがあるだろう。  安直な子どもだった頃の自分に苦笑し、優樹菜は続ける。 「そんな子どもだから、悪いことを考える大人からすれば絶好のターゲットだった」  優樹菜の言葉に、会議室の空気が一瞬にして緊張に包まれる。
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