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夢見る子どもとそれを搾取しようとする大人。その両者が登場して、めでたしめでたしとなることはない。子どもが声を上げれば事件になる話だ。
「大人になった今なら、周りもきちんと見て悪い大人がいないか気をつけなければならないというのがわかりますよね。特に女の子なら」
優樹菜の言葉に深く頷くと同時に、ああと思う。優樹菜もある意味、被害者だったのではないだろうか。
「けど中学生だった私は、自分は特別な存在なんだと浮かれてしまった」
声を震わせた優樹菜が唇をかみしめる。その目が潤むのを見れば、中学生だった優樹菜の身に何があったのか察してしまう。そして相手が夢見る少女を食い物にする悪い大人であろうことも。
その後、優樹菜の口から語られたのは御園の想像通りの事柄だった。真利亜の事件の話だったはずが、話の内容が優樹菜の身の上に起きた事件の色を濃くしていく。
「それでMALIAちゃんに相談したら」
ふいに真利亜の名前が出て身を硬くする。ようやく真利亜の名前が登場したと思うとともに、嫌な予感が御園の胸をよぎる。
優樹菜が遭った被害、それを優樹菜から相談を受けた真利亜。そして灯里の血縁上の父親、すべてがここでつながってしまうのではないか。
「真利亜さんは?」
優樹菜が首を左右に振る。真利亜の身に何が起きたか知らないということだろうかと思っていると、優樹菜が口を開く。
「その後はモデルを辞めて芸能界からも引退するってニュースを見て。それで驚いていたら、今度は結婚する、妊娠しているって話で」
「その結婚相手っていうのは?」
「山中先生。昔、私が通っていた塾の先生です」
真利亜の夫が山中であることは世に知られていることだ。山中の行方が分からないのをいいことに、話を捏造しようとすればいくらでもできる。
――いや、私は何を警戒しているんだ。
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