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気づくと、ここには多くの人が集まるようになっていた。
おじいさんがいなくなってから、誰もいなかったここに、多くの人が来るようになっていた。私の声を聞くために集まっていた。
かつて、私のことを否定してきた人も聞いていた。何事もなかったように、歌い終えると拍手をくれた。私だとは気づいていなかった。
私は、いくら歌手として有名になっても公の場に出たり、インタビューに応じることが出来なかった。
私は、歌うことしかできなかった。私は、歌うこと以外の表現の方法を知らなかった。
歌うことはとても楽しかった。たとえどんなに辛い事があったとしても歌うことだけは、支えになった。私は、歌うことを奪われたくなかった。本当の私を知られて、歌うことまで奪われるのが恐ろしかった。かつて、話すことを奪われたように歌うことが奪われることが恐かった。
話そうとすると、息がつまってなにも言えなかった。話そうとしても、頭は真っ白、視界は真っ黒になって何も言えなかった。
それでも歌うことだけはできた。歌うと私の世界に光が差してきた。いろんな色に輝く世界が見えた。
どんなところにいても、歌えば明るい世界が広がっていた。
私の歌う声をきいてくれる人にも、この世界が見えていればいいのにと思う。
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