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「ちなみに、メンバー最年少のサクラくんの趣味はゲームのプログラムで変なゲームばっかり作ってる。ユーキくん、ハルくんは小学校からの幼なじみで、事あるごとにお互いの事を暴露し合っていて、それがウケて最近バラエティ番組に引っ張りだこなの」
「お前、すごいな。このダンボールの中、みんなそいつらのグッズなんだろ? いや、すごいっていうか、もはや怖いわ」
「全部じゃ無いけど……」
ダンボール二箱分ほど、彼らのグッズが入っている。コツコツ貯めたお金で集めた大事な宝物だ。
「あきお兄だって、好きなサッカーチームのユニフォームとか、選手と同じサッカーシューズを持ってるじゃない。応援する気持ちは同じでしょ?」
「それとは同じじゃねえよ」
「推しって意味では一緒でしょ?」
兄は私を憐れむ様に見た。
「だって、そいつらは皆んな、お前が作った架空のアイドルグループのメンバーだろ」
兄はAIで作られたメンバーのクリアスタンドをデスクに並べて唸った。
「子供の頃から妄想好きだと思ってたけど、とうとう人間を作り出すとは恐れ入ったよ」
アツヤ、コウダイ、サクラ、ユーキ、ハル、五人共に癖はあれど、人間的に嫌なところは一つも無くて、誰を好きでいても他人に迷惑かけない、言わば神の様な存在だ。
「同担拒否とか言って絡まれる心配ないし、好きなだけ応援してあげられるんだよ」
兄は盛大にため息をついた。
「自分で作ったアイドルグループだからな。別にそれ自体は好きにすりゃ良いと思うよ」
「そう思うなら放っておいてよ」
自分で作り出した世界の中にいたら、私は傷つかないで済むのだから。
「お前さ、他人の目を気にし過ぎだと思うんだよな」
「どうせ自意識過剰だって言うんでしょ。そんなの分かってるよ」
自分が思っているほど、周りは私の事を見てないし興味ないのは今までの学生生活で嫌ってほど知った。
「いや、そうじゃなくてさあ。何かもったいなくねえ?」
「もったいない?」
「お前のその妄想力は金になる……じゃなくて、何つーか、同志っていうのか? 探せば、同じ趣味の仲間が何処かにいるんじゃねえのかな」
再び、一人の女子の顔が思い浮かぶ。
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