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後日、私は高校時代の友人、美香に会う事になった。電話で済ませようと思ったのに、美香の方が会う日にちをさっさと決めてしまった。
「敦子ちゃん、久しぶり。アイドルちゃん達も元気?」
美香はカフェレストランの椅子に座るのとほぼ同時にまあまあでかい声でそう言った。地声が高くて良く通るタイプで、内緒話には全く向かない。
「実は今日も連れて来ちゃった」
アツヤのアクリルスタンドをテーブルに乗せた。
「あはは。可愛いよね、アッちゃん」
美香は指先でアツヤの頭を撫でた。
「でも、私の好みはちょっと腹黒そうなユーキくんかな」
確かにユーキはメンバーを出し抜き、自分が一番売れたいと考えてるキャラクターだ。
「だけど、詰が甘くてコウダイくんに諌められちゃうところがカワイイんだよねえ」
「よく、そんなキャラ設定を覚えてくれてたね」
美香は驚く私を見て笑みをこぼした。
「それは、他の子には話してなさそうな秘密を、成り行きとはいえ教えてくれたから」
美香がユーキのアクリルスタンドを手のひらに乗せた。髪の毛と瞳がブルーのユーキがちょっと生意気そうに笑っている。
「本当に存在するみたい」
美香の大きな瞳が熱を帯びた様に見えた。
「何? 怖いんだけど」
「ねえ、いっその事、本当にデビューさせちゃえば?」
「えっ」
美香は自分のひらめきに確信を持つ様に頷いた。
「声優志望の子に声かけてさあ、いや、その前に動画作成か……」
「ちょっと、美香ちゃん。まだやりたいって言ってないって」
美香はハッとした顔をして、照れ笑いを浮かべた。
「ごめん、ごめん。あまりにも良い出来だから、金になりそうーーじゃなくて、商売になりそうだなって」
「あのさ、言い換えても同じ事を言ってるからね」
アツヤ達を商売の道具にするなんて許せるものでは無い。だけど、私の妄想を馬鹿にしない美香は、確かに私の味方かもしれない。
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